草うしのおじちゃん/草うしプロジェクト運営会議委員 古屋輝行

15.部位と特長の話

●個性いっぱい・・・いろいろ食べたい牛のあれこれ~部位の話

★肉身編★

●部位別内容●(褐毛和牛、一頭当たり=%・㎏)記述順=背中上面頭部から尻へ~腹面前から後ろへ。

1. ネック(首、ネジ) 3.5% 11kg煮込み料理・ミンチ・スープ材料
ネック
肩ロースの前にある牛の頚(くび)の部分。よく動く部位なので脂肪分が少なく赤身も多い硬めの肉質。スネ同様旨味が多く良質のダシがとれるので、角切りで煮込みやスープに。ひき肉や細切れに利用。
2. 肩ロース 8.8% 30kgすき焼き・焼肉 (クラシタ・ザブトン)
肩ロース
ロース全体の一番頭側で1~6番目までの肋骨にある最も大きな部位の一つ。脂肪が筋肉中に霜降り状に分布している。関西でクラシタと呼ばれるザブトンはこの肩ロースの中でもキメの細かな特上部位。
*牛には13本の肋骨があり頭側1~6番目までを肩ロース、7~10番目をリブロース、そこから後ろの腰にかけての肉がサーロイン。頭から尾に向かうに従いロース芯の割合がたかくなる。
3. リブロース 4.8% 15kgローストビーフ・ステーキ(ロース・カブリ)
リブロース
リブロースとは、肋骨部(=リブ)の背肉(=ロース)の意味で、サーロインと並ぶ最上部位。中心部のロース芯と呼ばれる胸最長筋の中、6~7番肋骨間の部分を切りだし肉質判定審査を実施する。肉の旨みが一番良く味わえるという肉好きも。
4. サーロイン 4.3%14kgステーキ
サーロイン
リブロースから腿に続く長方形の部位。リブロイン・サーロイン・テンダーロイン(フィレ)の中でもSirの称号が冠された最高の肉質の部位。筋肉と筋肉の間につく脂肪が少ないうえ肉質も柔らかい。
5. フィレ(テンダーロイン) 2.2% 7kgステーキ(シャトーブリアン・フィレミニョン)
フィレ(テンダーロイン)
サーロインの内側にある腰椎に沿った細長い肉で、太さ15cm前後、長さ5~60cm程度の棒状の部位。サーロインより脂肪交雑度合いは少ないが、全体のわずか3%程度しかとれずほとんど運動させない筋肉なのできめ細かく柔らかい最上級の部位。フィレを5等分した頭よりから2番目の「シャトーブリアン」はその中でも最高とされている。
6. ランプ(ランイチ) 5.0% 17kg焼肉・ユッケ・刺身・たたき(イチボ・ランプ・ラムシン)
ランプ(ランイチ)
サーロインに続く腰から尻にかけての部位。肉色は鮮明な赤色できめ細かく柔らかく風味が濃く適度なシモ具合の赤身肉。そのお尻のエクボの部分をイチボといいあっさりしてそうに見えて「これぞ肉」といった旨みがある。全体を続けてランイチと総称する場合も。
7. カタ肩(ウデ) 9.0% 30kg焼肉・たたき・しゃぶしゃぶ(ミスジ・サンカク・マクラ)
カタ肩(ウデ)
一般に腕の部位の総称で、関東でシャクシ、関西でウデという。よく動かすところなので柔らかい・硬い、サシ入り・なしなど様々な筋肉が交雑していて肉色はやや濃い目だが旨味の強い部位。ハゴイタと呼ばれる肩甲骨を外した内側は細かなサシの入った赤身肉のトウガラシ、サシがほどよく入った人気のミスジ、一頭から10kg程取れるカタサンカク、栗のような形状で赤身主体のクリなどに分割される。
8. 肩バラ(前バラ) 9.7% 31kg焼肉・煮込み(ブリスケ)
肩バラ(前バラ)
肋骨の外側部分をバラといい、その肩に近い部位でブリスケとも言われている。肉質は硬い目だが脂肪と赤身肉が交互の層をなしトモバラより赤肉への脂肪交雑が多い。
9. 三角バラ(カルビ) 2.0% 7.0kg焼肉
三角バラ(カルビ)
肩バラの部位の一部で特に脂ののったものは特上・上カルビとして焼肉の人気部位。
10. ともバラ 8.8% 28.5kg焼肉・シチュウ(カイノミ・ゲタ・ササミ・フランク)
ともバラ
腹部の肉のため呼吸に伴って運動がおこり、肉質はやや硬めだが脂肪も多く霜降りになりやすい部位。
11. 中バラ 8.9% 29.0kg
中バラ
12. 外モモ(外ヒラ) 7.7% 25.0kg煮込み・すき焼き(シンキボウ・ナカニク・ハバキ・センボン)
外モモ(外ヒラ)
モモの外側の部位で、運動する筋肉が集っている大きな赤身の塊の部位。肉質は粗く硬めで脂肪はほとんどない。ゼラチン質が多く赤身の旨味が詰った煮込み、薄切りにしてしゃぶしゃぶなど。
13. 内モモ(内ヒラ) 7.0% 23.0kgローストビーフ・たたき・刺身・しゃぶしゃぶ・すき焼き(コヒラ・ヒラカワ)
内モモ(内ヒラ)
ももの内側の部位で、いくつもの筋肉が集る大きな赤身肉の塊。牛肉の中では最も脂肪が少なく大きなブロックが取れるのでローストビーフにしたり、さく取りをして刺身やたたきに。
14. シンタマ(マル) 5.5% 20.0kgステーキ・ローストビーフ・シチュウ・たたき(ヒウチ・シンシン・カメノコ・トモサンカク)
シンタマ(マル)
ももの中では最も肉質がよい赤身肉で、内モモのさらに内側にある部分。サシは少ないが柔らかいシンシン。その廻りの粗めのサシが入った赤身肉がカメノコ。霜降りがしっかり入ったトモサンカクなどに分割される。関西でヒウチと言われロースで出されているところもある。
15. スネ 4.5% 15.0kgシチュウ・ビーフストロガノフ・スープ・ひき肉
スネ
四肢のフクラハギの部分で前ズネと後ろをともズネと呼ぶ。筋は多いが旨味が濃厚でぎっしり詰り、加熱すると可溶性のゼラチンとなり柔らかくなり煮込み系の料理に向く。コラーゲン質が他の部位の3倍もあり抗免疫機能も高い。スネから作るひき肉ハンバーグやミートソースは最高。かくれた食通の狙い部位。草うしのスネの柔らかい部分はそのままスネステーキで・・・旨みが凝縮され絶品。
16. ケンネ、小肉その他  6.5% 21.0kg

★内臓編★

1. 脳ミソ
ブレンズとも言い、ビタミンCがレバーに次いで多い。ただし現在はBSE対策のため、頭部(頬肉を除く)、脊髄、小腸のうち盲腸との接合部から約2mは流通されずに廃棄処分される。
2. 頬肉(ツラミ)
頭部の肉全体はガシラと呼び、頬とこめかみが上物。良く動かす部位なので歯応え充分。煮込みに重宝され深い旨みが。
3. タン
舌。根元まで含め約50cm・約1.5kg程度。下茹でして表面のざらざらした厚い皮をそぎ取り、薄切りで食べるのが基本。根元の方が柔らかく、タンツラと言うことも。最近ではタンツラをブロック状に切ってタンアワビと称して出す焼肉屋も。脂肪分が多い。タンシチュウ、タン塩。
4. ウルテ
気管の軟骨。最も硬い部位で切込みを入れて焼き物に。
5. ノドスジ(喉筋・ネクタイ)
食道管のことで開いて切れ目を入れて出すことが多く、形や場所からネクタイとも。赤身に近く食べ易い。
6. ノドシビレ(ノド)
胸腺のことで成長すると衰退するので生後一年までの子牛から取る。まったりした味わいでフランス料理ではリードヴォーと呼び珍重する。スライスしたものと黒トリュフをはさみ揚げしたりパテ、カツレツやロースト・グリルして。膵臓のシビレをシビレに含むか否かは両説ある。
7. フエガラミ(フエ)
気管のこと。軟骨ならではのコリコリした食感。
8. ハツモト
心臓の付け根の大動脈。関西ではコリコリやタケノコとも呼ばれている。
9. ハツ
心臓のことでやや濃いめの美しい赤色できめが細かく歯応えが良くクセのない味。ローストしたり刺身で。脂身がついたものをアブシンと言う。
10. フワ(プップギ、フク、ホッペ)
肺のこと。柔らかい弾力のある食感で淡白な味わい。
11. チレ(タチギモ)
脾臓。鮮度の良いものは刺身でも。淡白ながらコクのある味わい。
12. ハラミ(ウチバリ)
横隔膜の一部で両サイドの筋肉部分=赤身肉状。肋骨に近いところをサガリといい、ハラミ・サガリを区別しないお店もある。脂が多く濃い味。安価な焼肉のド定番。
13. サガリ
横隔膜の肋骨に近い部分で下にぶら下がっているような形状からこの呼び名が。適度に脂肪が入り柔らかく正肉に近い味わいと食感。
14. レバー(肝臓)
牛の内臓の中では最も大きく5~7kg。タンパク質、ビタミンA、B1、B2、鉄分が豊富。若い牛ほど鮮やかな赤色。肉食動物が捕獲した獲物の最初に食べる部位。
15. マメ((腎臓)
ブドウの様な房状。香りにクセがあるが脂肪がすくなくビタミンB1、B2鉄分が豊富。フランスでは仔牛のものはクセが少なく最上とされる。すき焼きに使う牛脂は椰子の実のようにこの周りにたっぷり付いている「ケンネ脂」。
16. ミノ(第一胃)
肉厚で白くクセは少ない。約8kg・容量120Lと胃の中では最も大きい。
硬いので包丁で切り込みを入れる場合が多く、蓑に似ているのでこの呼称に。胃壁に脂が挟まっている部分をミノサンドとして出すことも。第一胃なので雑多な食物がみな入るから臭みが強く水洗い・水煮の下処理が重要。
17. 上ミノ
ミノの中央部分の厚いところ。
18. ハチノス(第二胃)
1.5kg前後。蜂の巣状に筋があり独特のの風味と歯応え。スペインではトマト煮込みがバールの定番。
19. センマイ(第三胃)
3kg前後。ローリエと一緒に茹で臭みを取ったり湯通しした状態でみることが多い。ザクザクした歯応え。表面の灰色の部分を湯むきしたものを白センマイとして出す店も。
20. ギアラ(第四胃、赤センマイ、アカセン)
コロコリとした歯応えで旨みが濃厚。センマイに近い部分を白センマイとして出す店も。労働の対価=ギャラ=が語源の説もある。生物学的にはギアラのみが胃でミノ、ハチノス、センマイは食道が進化したもの。
21. 小腸(ホソ、ヒモ、ホルモン)
成牛は約40m、6.5kg前後のボリューム。流行の丸腸はこの部分をひっくり返して輪切りにしたもので脂がたっぷり付いている。
22. テッチャン(大腸、シマチョウ)
2.5kg前後。かなり硬いので長時間煮込む。茹でて脂を落とし味付けしたものがコテッチャン。
23. テッポウ(直腸)
柔らかくコクがあり脂も多く濃厚。
24. テール(尾)
長さ60~80cm。皮を剥がし間接部分で切って販売される。コラーゲンが多くスープや煮込みに。
25. コブクロ(子宮)
メスのみ。コリコリした食感。
26. チチカブ(乳房)
メスのみ。牛は4つ。乳汁を搾り出し洗浄して食べる。心なしかミルキーで程よい歯応え。
27. スジ(アキレス腱、ケン)
脚の後ろ側にある。スジともいいコラーゲンたっぷり。