草うしのおじちゃん/草うしプロジェクト運営会議委員 古屋輝行

10.草うしの生態について基本的な話

10-1. 草食動物であり反芻動物


畜舎内で牧草サイレージを食べる草うし

牛は元来、草原で野草・牧草をいっぱい食べ、食べたものを四つの胃を反芻させる反芻動物です。まず第一胃の中に食べたものを入れておき、その一部分が第二胃へ行きしばらくして食べた飼料を口の中に戻して再び噛み砕く。反芻した食物はまた第一胃に入り分解のすすんだものから第三胃に行き、第四胃、腸、の順で消化管を下って行く。第一胃から反芻せず直接第三胃に行く事はない。反芻が上手く繰り返されると消化がよくなるが、反芻を起こさせるには繊維質の多い飼料による第一胃粘膜の刺激が必要になる。第一胃と第二胃には多数の細菌とともにプロトゾアと言う微生物が生息しており、この働きにより飼料成分の分解や栄養素への変化が行われ、言わば飼料の貯蔵庫であり醗酵タンクであり吸収機能まで持っている。成牛の胃は大型種で200リットルもありその85%を第一・第二胃で占め、少なくとも第一胃の八割位の飼料が入っていないと順調な消化が行われない。順調な反芻を行うためにも、栄養分を補うためにもビタミン、ミネラルの豊富な養分に富んだ草類を沢山与えることが必要になってくる。草を与えないと牛の生理に合わない。草類を中心とした粗飼料を長いまま与えると、噛み砕く回数が増え飼料に混ざる唾液の量が多くなる。牛の唾液はアルカリ性で第一胃内のpHを調整しています。唾液の量は一日に50リットルにもなりそのpHを保つためにナトリウムイオンが必要で、粗飼料多給時は粗飼料中に多く含まれるカリが体内に吸収され、尿中に排泄されるときにナトリウムを伴って排泄されるのでそのためにも塩分の補給が必要となってくる。

昨今の工業型多頭飼育法による濃厚飼料多給の方法では、輸入の穀類に魚粉やビタミン剤、抗生物質等を混ぜ込んだ配合飼料を90%(全給餌量乾物換算)以上与え、その場合は特に繊維質を同時にたくさん与えないと牛の生理としてうまく反芻しないので、反芻を促す役目のためだけに栄養のないわらを5~10%与え胃膜を刺激する方法が主流。ひどい場合は過去にタワシ状のもの(人工繊維代替物)を胃に入れ込み反芻作用を起こさせていた場合もある。