草うしのおじちゃん/草うしプロジェクト運営会議委員 古屋輝行

10.草うしの生態について基本的な話

10-6. 牛の放牧


親子放牧中の草うしと斜面にできる「牛道」

放牧の目的は・・・健康な牛を育てるために栄養ミネラルたっぷりな牧草・野草をいっぱい食べさせること。あちこち草を求めて原野を歩き廻り心肺機能を高め筋骨を鍛錬し肢蹄のしっかりした牛に育てること。運動と屋外での生活は循環器系・呼吸器系の発育を促し更に病気に対して抵抗性の高い牛の基礎をつくること。充分に太陽を浴びビタミンDをとること。牛が山肌の斜面を廻ることでできる網目状の“牛道”は雨の流れを和らげ原野の崩壊を防ぐこと。・・・などです。

牛の放牧方法にも様々なスタイルがありますが主なものには次の2つがあります。先ず春から秋までの期間放牧し育てる方法を「夏山冬里方式」といい、冬は里の畜舎で飼育し母牛は出産し産まれた仔牛と放牧になれる準備を行います。そして春から秋までは、親子で牧草や野草がいっぱいの原野に出て新鮮な草をお腹いっぱい食べ歩き廻り大きく育てる方法です草うしスーパープレミアムはこの方式を2年間繰り返します)

もう1つの放牧方法に「周年放牧方式」があります。これは、年間を通して原野に放牧する方法ですが、冬でも新鮮な牧草、野草が食べられる事が条件になりますからこの方式は九州か沖縄地方の限られたところだけでできる方法です。今では最も自然な飼い方でしょう。その他に、毎日畜舎から裏山へ放牧させる「裏山放牧」だったり、親子で放牧させたり、畜舎の近辺にパドックという運動場を設けてそこで運動させる方法だったりその組み合わせの方式があります。

条件の良い牛は子牛期以降もそのままの放牧型で飼育されるものと、以降は畜舎飼いする方式があります。

また生後8~9ヶ月齢の頃に子牛はセリ市場に出荷して肥育農家に買われる子牛と、そのまま繁殖専門母牛として繁殖農家の手元で育てられる牛とに選別されます。

皆さんが「広い野原で牛を飼っている風景・・」と思っていらっしゃる風景は、今ではほとんどがこの繁殖専門牛として残した子牛と、その母牛たちが親子で放牧されている風景です。黒毛を中心に肉牛として出荷される日本のほとんどの牛はこのように放牧される事はなく、効率性を高めるために初乳後直ぐに母牛から切り離しその一生を畜舎の中だけで育てる方法です。

また子牛を産む専門の母牛=繁殖牛は健康体でないと毎年出産できませんから、経営的にもとても重要なので健康的な飼い方をされます。