それではこのように飼われた阿蘇の褐毛和牛“草うし”には、美味しさや栄養分にどんな影響や差が出るのでしょうか?実験牛を育て公的機関で分析した比較です。
草うしスタンダードタイプと、一般的な飼い方で穀物主体に食べ畜舎で育てたどちらも阿蘇の褐毛和牛・各々6頭の比較をしてみましょう。(2004/12~2006/7 実験牛 熊本県畜協)
(A)草うし
全飼育期間牧草・野草主体の粗飼料を35%以上、穀類主体の濃厚飼料を65%以下の比率で給与(いずれも乾物摂取量)。生後1~8ヶ月齢まで親子放牧の後、粗飼料(牧・野草)多給で舎飼いし、2シーズン放牧に似せた状態で飼育。26ヶ月齢
(B)慣行肥育牛
全飼育期間穀物主体の濃厚飼料を90%以上多給し、粗飼料は稲わら・サイレージを10%。放牧はせず畜舎にて飼育。24.6ヶ月齢
①化学成分(ロース芯)表1
n=頭 | 水分 % | イノシン酸 g/100g | 不飽和脂肪酸割合 % | n6/n3比率 | タウリン ㎎/100g |
|
---|---|---|---|---|---|---|
★草うし | 6 | 57.2 | 0.05 | 55.0 | 9.2 | 22.5 |
慣行牛 | 6 | 57.6 | 0.03 | 53.1 | 16.7 | 21.0 |
②機能性成分(ロース芯)表2
n=頭 | ユビキノン mg/100g |
アンセリン mg/100g |
カルノシン mg/100g |
カルニチン mg/100g |
クレアチン mg/100g |
|
---|---|---|---|---|---|---|
★草うし | 6 | 1.5 | 77 | 438 | 94.0 | 408 |
慣行牛 | 6 | 1.4 | 60 | 357 | 88.6 | 367 |
③脂溶性ビタミン(筋間脂肪中)表3
ビタミンA | ビタミンE | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
レチノール μg/100g |
αカロテン μg/100g |
βカロテン μg/100g |
αトコフェロール mg/100g |
β-トコフェロール mg/100g |
γトコフェロール mg/100g |
|
★草うし | 25.7 | - | 26.2 | 0.52 | - | 0.13 |
慣行牛 | 6.7 | - | - | 0.42 | - | 0.12 |
●試験結果の分析評価 (独)九州沖縄農業研究センター
- ①水分含量は差がなく、A・B脂肪交雑の違いはほとんどありません。過去の分析データー(2000/12~02/03)は水分65.4%で、比較すると水分含量が少なくなり霜降りが多くなった。
- ②旨味成分イノシン酸は、かつおダシに代表される水溶性旨味成分ですが“草うし”に多く旨味が豊かです。(別の実験データ-では、甘味を有するアミノ酸(スレオニン・セリン・グルタミン・グリシン・アラニン・バリンの合計値)含有量は、放牧牛が199.7㎎/100gで慣行牛は143.7mg/100gとなり放牧牛の肉には旨味成分が豊富。 農業・食品産業技術総合研究機構九州農業研究センター)
- ③不飽和脂肪酸割合は脂肪の質を左右する項目ですが、高い値を示す方が溶けやすく風味が優れています。このポイントでも“草うし”のほうが勝っています。また不飽和脂肪酸n6/n3比率も低く食品栄養学的に好ましい脂肪酸組成となっています。草には牧草由来のn3系不飽和脂肪酸であるαリノレン酸が多く含まれているからです。
- ④アミノ酸の一種で疲労回復効果があり甘味を有するタウリンも“草うし”の方が多い。
- ⑤機能性成分では、エネルギー産生に関わるユビキノン、抗酸化性を有するアンセリンとカルノシン、体脂肪燃焼機能とスタミナ源を有するカルニチン、運動機能向上と味覚における“コク”に関わるクレアチン、これら機能性成分も“草うし”に多くみられる。
- ⑥特にカルノシンは抗酸化ペプチドとして、植物性食品とは異なる抗酸化性を有し食肉中の機能成分として今後評価が高まっていくことが期待されている。また運動時の筋肉中乳酸蓄積の弊害を予防する効果も知られていて“草うし”の方が明らかに高い数値を出している。(ユビキノン、カルニチン、クレアチン、カルノシンなどの機能性成分は飼料中にはほとんど含まれておらず、健康な家畜が体内で生合成している。人も動物であるから生合成が可能であり、概してストレスや老化に伴って不足がちになる。これらが豊富であることは健康な牛の証となる。)
- ⑦筋間脂肪にみられるビタミンA(レチノールとβ―カロテイン=抗酸化作用と免疫調整作用)とE(細胞の老化防止作用)も“草うし”に多く、健常な免疫機構としてやまた生物的抗酸化剤として全身的に機能していて非常に良い状態です。
以上のように、各ポイントで“草うし”の方が機能性成分が豊富で健康な食品として優れていることだけでなく、旨味成分濃度も高いことがデーターとして明確に示されました。
(出典:持続型草地畜産総合支援プログラム=熊本県畜産協会、グラス&シード放牧と粗飼料を多給した畜産物の特徴=日本草地畜産種子協会、日本飼養標準 肉用牛=中央畜産会)
(分析データー:調査=(社)熊本県畜産協会 分析=(独)九州沖縄農業研究センター)
●このように栄養価も旨み成分も高い草うしを食べての感想は・・・お客さまのアンケートから抜粋しますと・・・。
- ・脂味がしつこくなくジューシーで柔らかくおいしい。
- ・脂が少しクリーム色でおいしい。
- ・どの部位も牛肉本来の味と香りがして、脂身でなく赤身そのものの旨さがある、違う。
- ・スネ肉の美味しさに感動した。
- ・臭くない、くどくない、もたれない。
- ・甘味を感じる。
- ・噛むほどに味わい深い。
- ・美味しさが広がってきます。スムーズにストレスなく食べられます。もたれません。
- ・ワインがこの風味と好く合います。
- ・おいしいなら健康なものの方が良い。
- ・牛本来の、草で育てた牛の肉を食べたい。
- ・従来の牛とちがう、草をたくさん食べて育てたことがアピールポイントではないか!?
- ・健康な牛を育て健康な肉を提供するという素晴らしい飼育方法だと思う。
- ・意義のあることだと思う。本来、自然の中で自然に育ったものが、牛肉にしても野菜にしても美味しさの原点。何でも今は人が手を加え過ぎの傾向だ。