黒毛和牛でも褐毛和牛でも例えばここ、阿蘇の広大な自然の中で牛がのんびり草を食み、寝そべったり歩いたりして昔からの何とものどかで健康的な牛飼い風景が展開されている。都会に住む我々は、日頃食している牛は当たり前のようにこのような環境下で自然な草をいっぱい食べ育っているものと思っている。実はこの風景からイメージするかたち=自然な放牧で運動をし日光を浴び、野草・牧草を好きなだけ食べて育つかたち=は日本ではもうほとんど幻想に近い食肉牛の飼い方である。
草うしの放牧風景
端的に何が現実と違うかを述べてみますと・・・。
先ず冒頭に述べた飼い方のスタイルは、ほとんどの場合一部の繁殖農家(母牛を育て種つけの後出産させ更その子牛をセリ市場にかけるまでの約9ヶ月間育てる専門農家)が、妊娠中の母牛、子を産んだ母牛(繁殖牛)と将来母牛になるために選別した子牛を一緒に育てる時の風景で、その繁殖農家に広大な放牧地があるとか余程恵まれた環境の繁殖農家と牛だけができるかたちです。皆さんが日常食べるほとんどの牛たちは、産まれた仔牛は母牛(繁殖牛)とは別に早いものでは生後1~2週の初乳を与えた頃のタイミングで母牛から切り離なされ、人工乳・代用乳と離乳用濃厚飼料で育て、生後9ヶ月あたりで子牛セリ市場に出荷し肥育農家(肉牛に育てる農家)に買われます。セリで買われた子牛たちはセリ市場から全国各地の肥育農家に引き取られ、松○牛や○戸牛と名を変え育てられます。生まれた時から管理畜舎の中で肥育され、中にはその一生(黒毛で約40ヶ月前後)を広い野原や運動場に出ることもなく畜舎で過ごし、本来牛が食しないトウモロコシや大豆主体に魚粉、米糠などの濃厚(配合)飼料と濃厚飼料では不足するビタミン補給の合成ビタミン、抗生物質、成長促進剤を与えブロイラー状態で育てられ、中には重度の健康障害を起こしながらと畜されるものも少なくありません。
このような方法で飼育された牛はメタボリックシンドローム状態でほとんど間違いなく病気になります。
母牛から離され代用乳を飲む黒毛和牛