草うしのおじちゃん/草うしプロジェクト運営会議委員 古屋輝行

09.阿蘇の広大な草原を背景に取組みを始めた理由

09-2. 健康牛を育てるために・・・上田尻牧野組合と環境

私たちの考える“健康で美味しい牛”をつくるための絶対的な要件として、ここ阿蘇産山村の環境の優れているポイントを述べますと・・・


ヒゴダイが咲いている高原

  • ① 阿蘇高原草地約25000haの中、北外輪山に位置するこの高原原野は、環境を汚染するものが一切なく遥かに九重山を望む標高700~1050mにあり、夏でも冷涼な気候。牛たちも夏ばてせずに元気に育てられます。(牛は寒さに強く暑さに弱いといわれています。理由の一つは、草をたくさん食べ大きな胃に溜まると反芻と共に醗酵が起こり醗酵熱が発生します。お腹に湯たんぽを抱えているような状態ですから、畜舎飼いする時は余程風通しをよくし温度管理をしないといけません。牧場で牛が反芻しながら寝そべっているのは地面でお腹を冷却しているのでしょう。)
  • ② 牛がのびのび運動し牧草・野草をたっぷり食べれる280haの広大な放牧原野を共同管理(入会権)しています。春の一番草に始まって年三回の牧草刈りができるので、放牧期間外の牧草も完全に自給。この地の牧草やサイレージは栄養価・質が高く、2010年全国放牧草地コンクールで農水大臣賞グランプリを獲得した日本一の牧草地です。

    牧草刈り取り作業中
  • ③ 全国名水100選の池山水源がここにあり、新鮮でミネラルたっぷりな水を豊富に飲んでいます。
    (毎年水質検査を実施しています。)

    日本名水百選「池山水源」
  • ④ 15人の組合員全員が、代々の土地や千年の昔から受け継がれてきた野焼き~放牧~刈り取りの循環スタイルを守り続け通称”阿蘇のあか牛“をとても大切にしている。
  • ⑤ 繁殖農家(仔牛を産ませ約9ヶ月の間親と子を一緒に放牧し育てる専業)も村内とその周辺に牧場があり、日常からの信頼関係で育て方の内容が把握できる状態にあります。
    (繁殖農家と肥育農家があり、肥育農家は繁殖農家が育てセリに出荷した子牛を買い育てます。)

・・と言った点です。


組合員の皆さん


放牧牛と組合員

このような全国でも稀な恵まれた好環境下にある上田尻の皆さんと、阿蘇で千年の歴史のある褐毛和牛を明確な生産基準を策定し放牧型粗飼料多給飼育(たっぷり放牧=3~7ヶ月間の親子放牧=させ栄養価の高い牧草、野草を欲するだけ給餌する飼い方=乾物量換算で粗飼料比率35%以上)で取り組んでいます。今では年間220頭強を出荷でき多くのお客さまから「健康的で赤身がおいしい」と高い評価を頂いています。更に高い生産基準を設け健康で元気でおいしい栄養価の高い牛の生産を目指し、また大地・草原を使い切る繁殖・肥育から流通までの一貫した資源循環型畜産システムづくりで、地域の環境保護と経済の活性といった両面が成立するようなビジネスモデルの実践と研究を行っています。

それではもう少し詳しく“本当に健康な阿蘇の草うし”の話をしましょう。